千鳥の曲 吉沢検校作曲
2016/05/17
幕末に名古屋、京都で活躍した盲人音楽家、吉沢検校(二世・1800年(寛政12年) - 1872年(明治5年))が作曲した。
『六段の調』(八橋検校作曲と伝えられる)、『春の海』(宮城道雄作曲)と並んで広く知られる。
明治以降の箏曲に多大な影響を与えた。
同時に、胡弓本曲としても重要な位置を占める曲である。
『古今和歌集』、『金葉和歌集』から千鳥を詠んだ和歌二首を採り歌とし、器楽部である「前弾き」(前奏部)および「手事」(歌と歌に挟まれた、楽器だけの長い間奏部)を加えて作曲したもので、吉沢自身が考案した「古今調子」という、雅楽の箏の調弦、音階を取り入れた新たな箏の調弦法が使われている。
この『千鳥の曲』と、そのあとに作られた『春の曲』、『夏の曲』、『秋の曲』、『冬の曲』(いずれも古今和歌集から歌詞を採ったもの)の四曲を合わせ、「古今組(こきんぐみ)」と呼ぶ。
吉沢検校はそのあと更に「新古今組」四曲も作っている。
本来は胡弓と箏の合奏曲であるが、胡弓奏者がきわめて少ないため、吉沢検校直系の音楽団体である「国風音楽会」や、その流れを汲み東京に本部を置く絃詩会以外では、胡弓入り合奏はほとんど行なわれない。
箏の独奏で行なわれることも多い一方、吉沢本人が胡弓パートに類似した箏の替手も作っており、箏の本手、替手による合奏が流派を越えてよく行なわれる 。
また後世尺八のパートが作られ、現代ではむしろ箏に尺八が合奏されることがごく普通である。
そのため、これほど著名な曲であるのに、三曲界でも『千鳥の曲』が本来胡弓、箏合奏曲であることを知らない人が非常に多い。
箏:宮城道雄(昭和4年録音)