尺八古典本曲 一閑流 『一閑流六段(流し六段)』

2016/05/17


1. 曲名について
「一閑流六段」あるいは「流し六段」ともいわれるこの曲は、筝曲の「六段の調」の旋律­が
虚無僧の尺八に取り入れられ、自由な拍節の尺八本曲風に変形されたものである。
神如道が伝承したのは根笹派に伝えられたもので、コミ吹で吹かれる。
この曲には次のような言い伝えがある。
弘前の蘭庭院十七世鉄山芳樹和尚(天保十四(1843)年没)は、宮地一閑の門人で
この曲を伝えたが、人に教えず、また人前で吹かなかった。
伴建之はこの曲の教えを乞うたがかなえられず、深夜ひそかに院内の墓地にしのび込んで­、
和尚の吹奏を盗み聞くことをくり返し、三年をついやして四段まで(三段までという説も­ある)を
聞きとったが、それ以後は和尚の死によってついに覚えることが出来なかったという。
一閑流の曲であるが、関東にはこの曲の直接の伝承はないようである。

2. 曲の構成
「六段」とはいっても、六段全部ではなく、初段・二段・三段のみである

3. 曲の特徴
全体としては筝曲「六段の調」の旋律をそのまま追いながら、
随所で尺八本曲らしい装飾音型を加えたり、律のテトラコルド(陽音階)を混用し、
また、フレーズの切り方やリズムを、尺八本曲風に自在に変化させて、
原曲とはかなり違った曲調になっている。
コミ吹で吹かれるから根笹派の芸風そのもので、「調」「下り葉」「松風」各曲の
裏調子とよく似通った洒脱な味わいがある。

この曲は永野旭影から神如道が伝承した。

-古典本曲
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